阪神ファンなら常識となっている「甲子園は左打者不利」という理論。
理由は、ライトからレフト方向に吹く浜風によりホームランが出にくいからなんですが。
理屈的にはわかるんですが、これって本当に不利と言い切れるんでしょうか。
素朴な疑問を感じたので、今回はその真偽を確かめるべく分析をしてみました。
甲子園左打者不利説に感じる2つの疑問
世間の野球ファンやプロ野球OBが口を揃えて「甲子園は左打者不利」と言いますよね。
確かに、甲子園でライトへのホームランはあまり見ない気がしますし、なんとなく不利な気がします。
でも、ふと私の中に2つの疑問が湧いてたんですよね。
どんな疑問かというと、こんな感じです。
メモ
歴代の阪神のスラッガーで右打者の記憶があまりない
なぜ右ではなく左の大砲を獲得するのか不明
まず1つ目の疑問なんですが、右打者有利な球場のわりに右のスラッガーの記憶があんまりないんですよね。
パッと思いつく選手ですと「田淵・真弓・岡田」の3選手がいますが、近年の選手ではギリ濱中選手くらい?
一方の左打者は結構豊富で、「バース・掛布・ブラゼル・金本」の歴代スラッガーが思い浮かびます。
明らかに左打者のメンツの方がホームラン打ってますから、左打者不利なことに疑問を感じます。
そしてもう1つ「左の大砲獲得をなぜ獲得するのか」という部分。
左打者不利なら、単純に右打者限定でスラッガーを獲得する方がいい気がしませんか。
ところが、2020年ドラフトでもドラ1で左の佐藤選手を獲得したり、左の助っ人ボーアを獲得するなど、球団側の意図がイマイチわからない。
これらの疑問から、甲子園の左打者不利説って実は迷信なのではと思ったわけです。
甲子園と左打者に関する3つの分析
じゃあ実際のところ、左打者は不利なのでしょうか。
ここでは、3つのポイントに分けてそれぞれ分析をしてみたいと思います。
浜風の影響
いきなり核心部分ですが、甲子園名物「浜風」は本当に左打者に不利なのでしょうか。
その理由を色々調べた結果、確かに不利とはいえ近年は状況が変わっているみたいです。
そもそも浜風とは、内陸部の気温が高くなることで上昇気流が起こり、海側から内陸部へ風邪が流れ込んでくる現象のことを言います。
甲子園球場の図で見ると、こんな感じになります。
風の強さは上昇気流の強さに比例するので、夏場の暑い時期になるほど浜風は強くなるわけです。
確かに、プロ野球は暖かいシーズンに行うので左打者は不利と言えるでしょう。
ただし、浜風に関しては3つの補足情報を知っておくべきだと思っています。
ポイント
気温が下がる時期は浜風は逆方向に変わる
2005年にライトスタンド後方に巨大マンション建設
2005年バックネット上段のフェンス広告の撤去
まず1つ目ですが、浜風の風向きは気温が下がると逆方向に変わります。
先ほど説明した仕組みから分かるとおり、気温が低下すると内陸部の上昇気流がなくなり、逆に海側に向けた風向きに変わります。
阪神の応援歌に「六甲おろし」がありますが、この六甲おろしとは内陸部にある六甲山から海側へ降り下ろす強い風のことで、冬になるとこの風向きになるのです。
つまり、開幕直後の春先やシーズン終盤では浜風は逆方向に吹くこともあるわけです。
夏場甲子園を高校野球に明け渡すことは、阪神の左打者には好都合と言えるのかもしれませんね。
2つ目は、2005年3月ライトスタンドの後方に「mapaグリーンラグーナ甲子園」という、高さ40m14階建ての巨大マンションが4棟建設されたことです。
この影響から、浜風が遮られるのではないかと言われているのですが、結論としてマンションによる浜風弱体化は不明なんだそうです。
ただ、神戸海洋気象台はマンション建設による浜風への影響に関して、このように発言しています。
マンション建設の影響が全くないとは言えない
何とも歯切れの悪い答えですが、、
ちなみにマンションの立地はどのあたりかというと、以下のとおりです。
ライトスタンドとの距離で言えば、約400mくらいでしょうか。
風の動きの専門ではないので影響は読めませんが、もしかすると2005年から浜風は弱まっているかもしれません。
そして3つ目、これも2005年バックネット上段の看板広告が撤去・移動されました。
その影響から、バックネット上空に風が吹き荒れるようになり、球場内の風向きが変わったと話題になりました。
こちらもマンション建設と同じく、浜風の影響に関しては不明ですが、多少なりとも影響があるのではないでしょうか。
ここまでをいったんまとめると、浜風は左打者に不利なのは間違いないが、季節や近年の環境の変化によって影響が弱まっている可能性もあり、といったところでしょうか。
甲子園球場の構造
浜風の影響とは別に、甲子園球場自体がホームランが出にくいことはあるんでしょうか。
分析結果から結論を言えば、ややホームランが出にくい構造であると言えるでしょう。
その理由について解説しますが、まず球場別の構造をデータで見てみましょう。
球場別の構造データ
球場名 | 両翼 | センター | 左右中間 |
横浜スタジアム | 94.2 | 117.7 | 111.4 |
阪神甲子園球場 | 95 | 118 | 118 |
神宮球場 | 97.5 | 120 | 112.3 |
東京ドーム | 100 | 122 | 110 |
ナゴヤドーム | 100 | 122 | 116 |
MAZDAスタジアム | 101 | 122 | 116 |
意外かもしれないんですけど、甲子園って両翼とセンターは狭いんですよね。
セ・リーグでは、横浜スタジアムに次いで2番目に狭い球場と言えます。
なので、場所によってはあっさりホームランとなるケースが多いんですね。
ただ問題なのは、左中間と右中間が6球団で一番深いことなんですね。
どんな構造なのか非常に分かりやすい図を見つけたので、ここに貼っておきますね。
このように、甲子園は扇型の構造になっているためホームランが難しいんです。
両翼のポール際かバックスクリーンが一番の狙い目ですが、ここを狙ってホームランにするのは至難の技ですね。。
ちなみにそれをやっていたのが元阪神の鳥谷選手で、ぜひ映像を見てみてください。
上手くレフト方向へ流して、そのままスタンドインした素晴らしいホームランですね。
これは鳥谷選手の技ありだと思いますが、とはいえ甲子園は右打者左打者関係なくホームランが狙いにくい構造と言えます。
2019年ホームラン数
証拠となる数字なのですが、球場別のホームラン数にどれだけ差があるのでしょうか。
2019年シーズンのデータをまとめてみましたので、見てみてください。
球場名 | 本塁打数 | 試合数 | 平均 |
東京ドーム | 219 | 64 | 3.4 |
神宮球場 | 192 | 67 | 2.8 |
横浜スタジアム | 192 | 71 | 2.7 |
MAZDAスタジアム | 118 | 70 | 1.6 |
甲子園球場 | 79 | 62 | 1.2 |
ナゴヤドーム | 73 | 71 | 1.0 |
球場の構造の問題を前半でお伝えしましたが、実際ホームラン数も少ないですね。
球場が広いナゴヤドームは結構悲惨ですが、、甲子園も打者には不利と言えます。
2020年シーズン、巨人岡本選手と大山選手がホームラン王争いをしていましたが、これは明らかに不公平でしょう。
阪神球団には、ぜひ対策としてラッキーゾーンの新設を本気で考えていただきたいです。
じゃないと、阪神に入団したスラッガーたちが浮かばれませんから。
シーズン30本塁打以上の歴代スラッガー
浜風と球場の構造についてご紹介してきましたが、では実際に左右で成績に違いはあるのでしょうか。
そこを確かめるべく、過去にシーズン30本塁打以上記録した人ののべ人数を左右打席別でまとめてみました。
年代別 | 右打者 | 左打者 | 合計 |
〜1970年代 | 12人 | 3人 | 15人 |
1980年代 | 3人 | 8人 | 11人 |
1990年代 | 0人 | 0人 | 0人 |
2000年代 | 2人 | 3人 | 5人 |
2010年代 | 0人 | 1人 | 1人 |
合計 | 17人 | 15人 | 32人 |
2000年代以降の人数が少なすぎるのは悲しいですが。。
このデータから、右打者と左打者のホームラン実績はほぼ変わらないことが分かります。
特に1980年代は掛布・バースがホームラン量産していたので、左打者の人数が大きくなっています。
これを見る限り、左打者だから甲子園でホームラン打てないというのは間違いだと分かりますね。
ここまでの話を全てまとめると、以下の2つの結論が見えてきます。
左打者にとって不利な浜風を生かしてホームランを量産したのが、掛布さんとバースでした。
掛布さんがバースに対して、浜風を利用した打ち方を伝授していたのは有名な話。
当然遠くへ飛ばす力と技術ありきですが、彼らはセンターから左を狙って打ち、浜風を利用してホームランを量産したことは事実です。
2000年〜2010年代でも、金本さんやブラゼルがレフト方向へホームランを量産していた記憶があります。
結果的に、右打者も左打者も関係なく甲子園でホームランを打てることが証明されたと思います。
まとめ
以上、甲子園は左打者が不利だという説に関して色々と分析をしてきました。
甲子園自体がホームランに適さない球場ですが、工夫すれば左打者でも打てるというのが私の結論です。
2020年ドラフト1位の佐藤選手は、金本さんからホームランの打ち方を伝授してもらいたいと言っていましたが、素晴らしい考えだと思います。
金本さんも左打者ながらシーズン40本塁打を記録しましたし、その極意をぜひ学んで欲しいですね。